2015.12.16
コナミ小島秀夫さん退職と元カプコン稲船敬二さんの現在から考える「クリエイターの起ち上げる会社は上手く行くのか」について
「メタルギア」シリーズなどで有名な小島秀夫さんが、KONAMIを退職したというニュースが入りました。
小島秀夫氏がコナミ退社、新会社設立か―日経報道
http://www.inside-games.jp/article/2015/12/16/94097.html
小島さんの進退については以前より話題になっていたため今回の取り上げ方も大きかったのですが、実はちょっと名の知られたゲームクリエイターが独立することはゲーム業界で日常茶飯事です。特にソーシャルゲーム時代に突入してからというものゲームの数が爆発的に増え、コンシューマーの時代に比べて「大ヒットゲーム」も多くなりました。ソーシャルゲーム会社は元々ITベンチャーの気質を持った会社も多いため、優秀な人材の独立が盛んです。結果として「あのApp Storeランキング3位だったドル箱ゲームのメインプログラマーが退職して独立した」とか「あの会社を立ち上げた人は、あの大ヒットゲームのプロデューサーだったらしい」とかいう話は尽きません。また、あまり知られていませんがソーシャルゲームが出てくる前からあるゲーム開発会社の9割は「大手から独立したスタッフで作った会社」です(プログラマーやデザイナーが特に多い)。そのため小島秀夫さんの退職や、「新会社設立か」という憶測についても「ついに動いたんだな」という感覚です。
大手コンシューマーゲーム会社を辞めて会社を設立した、というプロデューサーの話は実はかなりありますが、一番皆さんの記憶に新しいのは元カプコンの稲船敬二さんでしょう。稲船さんは株式会社カプコンで「ロックマン」シリーズや「バイオハザード2」、「鬼武者」といったヒット作のディレクションを行い人気を博し、同会社の執行役員及び関連会社の代表にまで就任しました。その後2010年にカプコンを退社、同年12月に株式会社comceptを設立しました。
株式会社comceptはその名の通り「コンセプト」を大切にする会社です。稲船さん自身が感じる日本のゲーム業界の危機、冒険しないクリエイターへの危機を救うべく、クリエイティブコンセプトの提供やクリエイターの育成を中心としたゲーム制作を行っています。
設立後いくつかゲームを作っていますが、何よりも話題をさらったのは日本ゲーム業界で最大規模のクラウドファンディング「Mighty No.9」プロジェクトです。当時まだ日本では一般的で無かったクラウドファンディングを戦略的に利用し、見事4,046,579ドル(1ドル100円で4億円以上です)の出資を得ます。このことはゲーム業界内でも話題になり、その後クラウドファンディングについて認知させるきっかけを作りました。
これらは全て稲船さんの「コンセプト」あってこそ。やはり有名クリエイターが情熱とコンセプトで起ち上げた会社は上手く行くんだ!と、そういった新規企業に希望を持つ人も少なくないかと思います。
しかし・・・
実際、クリエイターの起ち上げた会社というのはクリエイティブだけでやっていけません。当然ながら会社とは「ビジネス」な訳ですから、もし良い企画を作ったとしても、正しい宣伝方法や優秀な外注先、きちんとしたクオリティコントロール、スケジュールを守らなければ結果は悲惨です。出来上がったゲームが売れないというだけでなく、経営に直接ダメージが与えられる訳ですから給与の遅配や最悪倒産という事だってあり得ます。メーカーという後ろ盾が無い分、事務、経理、広告宣伝、販売網の構築も全て、自分達で1から始める必要があります。結果的に「クリエイターが起ち上げた会社」は、メーカー並の規模を持った複数のプロジェクトを少数人数で回してゆく事になるので、忙しさとしてはメーカーの倍では済まないでしょう。
しかしその一方で良いこともあります。予想できるかもしれませんが、成長のスピードが半端ないのです。考えてみれば当然の話で、一流のクリエイターの下で通常の倍以上の仕事量をこなしていれば、どこでも通用する一流の仕事人になることができるのです。また、そのクリエイターが何故成功したのかという仕事ノウハウも身近に学ぶ事ができますし、こういった会社で築ける人間関係は濃いものとなってゆきます。
実は私の知り合い元カプコンで稲船さんの会社に一時的に出向という形で在籍していた人がいたのですが、やはり個人主義ではなく助け合うような会社の雰囲気、全員である目標を目指そうと突き進む様子はとても魅力的だと語っていました。そういったクリエイター側から見た魅力というのは、やはりとても強いものがあります。
稲船さんの場合はカプコン在籍時代から海外ファンへのサービスを怠らずできる限り「Keiji Inafune」を印象づけようとする動きが多かったため、先のMighty No.9プロジェクトでも海外ファンからの出資を多く受けることができました。このように前職で在籍していたメーカーのブランドや情報網に頼らず、独自のルートを築き上げ、クリエイティブだけでなく経営まで見られるクリエイターが独立した際には、彼らが設立した会社は「大変だけど伸びる会社」になります。そして、ここだけは覚えておいて欲しいのですが、稲船さんや小島さんだけに限らず、ゲーム業界は「独立して作り上げた」開発会社がほとんどです。志望する会社を探す際は、その会社のクリエイティビティだけでなく「会社」としての動きも見てみると多面的で安心出来る就転職活動ができますので、是非お勧めします。
なぜ、会社としての動きも見た方がいいかというと、アニメゲームマンガが世の中に提供されるまでにはクリエイター以外の色んな人が関わっているからです。その全ての人達をハッピーにしてこそ、大ヒットが産まれます。ついつい作ってる人ばかりに注目しがちですが、本当にクリエイターだけで作れるならそもそもクリエイターは全員起業してますよね。そうじゃない以上、作品を作る以外に色んな要素があるのです。その全体像を分かって就職や転職を考えると、応募先を見る視点が一つ増えます。また、そういう視点を持っている人が会社が求めている人もであるので結果的に年収アップ、キャリアップに繋がります。そういう人は最終的に自分の作りたいこのを作れる環境が与えられると思いませんか?
最後にMighty No.9のクラウドファンディングが終わった頃の、2013年のクリスマスに公開した動画を再度貼り付けておきます。
稲船敬二さんメッセージ ゲームクリエイターを志す人々へ!
因みに「Mighty No.9」は私も10万円ほど出資をしました。小島さんの作品にもクラウドファンディングの機会があったら是非出資したい!
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