2016.06.09

パズドラ、モンスト・・・あらゆるゲームが被っている「チート」の違法性と根深い問題について

Online intruder geek guy hacking codesポケモンLv.100改造は違法になるのか

私と同じくらいの年代の方々は、かつてのポケモンブームの際に様々な裏ワザを試したのでは無いかと思います。かく言う私も、伝説のポケモン・ミュウを何とか手に入れるためにゲームソフト本体をバグらせてまで目的を完遂しました。コイキングの特異進化(?)だったため、物凄く弱いミュウでしたが・・・。その他にも「けつばん」や「一気にLv.100にする」といった裏ワザは当時の子供達によく知られたものでした。私たちはそういった情報を口コミなどで必死で集め、友達に自慢しました。当時まだ一般化していなかったインターネットを使って父親に調べてもらい、裏ワザを皆に教えていた子がいた記憶もあります。しかし、もしも当時の裏ワザが実は違法だったとしたら・・・?今回は、現在の子供達が知らないうちに手を染めてしまっている「チート」とその問題についてお話しします。


cheetingゲームアプリでは「違法」な裏ワザ

私たちが子供だった頃、いわゆるゲームソフト内のバグを利用した「裏ワザ」に目立った違法性はありませんでした。裏ワザを利用した場合ゲームソフト自身がバグってしまい使い物にならなくなるという欠点はありましたが、購入した後のものですから自己責任です。しかし現在子供達が主に遊んでいるゲームは大抵
がオンライン通信を基本とした課金制ゲームアプリです。そこで行われる裏ワザは、一般的に「チート」と呼ばれ、小中学生を中心に「キャラクターのステータス改変」「スキル改変」等の形で親しまれています。「チート」は、ゲームソフトでは無くアプリで行われるため、内部をいじるということはそう多くありません。基本的にはゲーム制作側と全く関係無い外部業者からの「チートツール」等を購入することで、プログラミングをいじらず簡単にチートができるようになっています。(図は実際に出回っているチートツールと、それによってスキルを改変させられた例。数値を置き換えるだけでチートが可能。)

imageチートツールが無意識に増やして行く犯罪者

チートツールへのアクセスは簡単です。「チートツール」で検索すれば沢山出てきますが、ツール自身の販売は勿論のこと、Twitterでチート代行を行う業者、ツールをダウンロードした携帯端末をヤフオクで販売する業者もあります。またYouTubeでチート方法を無料公開することにより動画広告収入を稼ぐ人などもあり、以前よりもインターネットに親しみがある小中学生が簡単にチートを行えるようになっています。しかし、こういった情報発信だけであればポケモン時代からあったものですが、問題はこの「チート行為」自身が違法だということです。そして、その違法性についても問題はついて回ります。

現在、チートツールの販売、チートツールインストール済みの端末販売については、いくつか逮捕者が出ています。しかし、罪状は「電子計算機損壊等業務妨害」から「不正競争防止違反」、「著作権法違反」、「電磁的記録不正作出・供用罪」・・・と、それぞれ同じような内容でも逮捕の理由は別々なのです。どれであれ、決められたルールを守った上で商売が成り立っているビジネスを外側から破壊しているという点では明らかなルール破りが行われていますが、チート全般に関する法整備が行われている訳ではないため、告発できる環境がまだ容易とは言えません。

しかし、チート行為自体が広がることでゲーム提供会社が被る被害は明白です。アイテム課金率が落ちるなどの直接的被害はもちろんですが、チート行為をしているプレイヤーを別のユーザーが目にすることによって不公平感が広がり、ゲームを遊ぶモチベーションが大幅に下がることも危惧されています。チートが横行すればする程レビューが荒れるなど、一部のゲームユーザーや外部のチートツールが原因で高評価のアプリが不人気になってしまう可能性もあります。何より、子供達が違法の可能性が限りなく高いチート行為に、深い考えなく簡単に手を染めてしまうリスクもあります。

560176解決にむけて

実はチートに関しては、まだゲーム業界全体での問題意識が高いとは言えません。Nexon日本法人のように警察と組んで不正防止キャンペーンを打つ例は珍しく、ゲーム自身への打撃がすぐ目に見えにくいことから、対応が二の次三の次になっているのが実情です。しかし自社の作ったゲームが原因で子供達が違法行為に手を染めてしまうこと、折角作ったゲームが、開発者の意志と全く関係無いところで望まぬ評価を得てしまい、人気が下がってしまうことはゲーム業界全体にとって大きな問題です。チート行為について「うちのゲームはチートが出る程売れるとは限らないし・・・」と特に対応をしない会社さんも多いようですが、ゲーム業界全体に関わることなのであればメーカーや開発会社1社1社が意識して行くべき問題でしょう。

例えばゲームの起動画面でチート行為が違法になり得る可能性がについて注意を呼びかけているアプリはほとんどありません。そういった画面を1つ挟むだけでも、チートに関する世間の認識が大きく変わるきっかけになると思われます。このままでは、ただチートが無自覚な子供達によって一般化されてしまい、アプリゲーム業界の不本意な衰退にも繋がりかねません。作る側も遊ぶ側も安心して楽しめる環境が、こういった些細な問題意識から生まれて行くことを願います。

※今回の記事には、サイファー・テック株式会社様から多くの資料をご提供いただきました。ありがとうございます。

PROFILE

平田 悠貴 ビ・ハイア株式会社副社長

平田悠貴

ラクジョブ運営会社で2番目に偉い人で現場で1番偉い人。東京都在住。学習院大学文学部哲学科出身。ラクジョブはこの平田さんがいなかったらもっと前になくなっていたでしょう。アニメをみて、作画が良いと良く感動して泣きます。