2016.04.18

アニメゲーム漫画業界での「クリエイター」はどうあるべきか。落合陽一さんの『これからの世界をつくる仲間たちへ』から考える

51Lbb8nf1KL._SX345_BO1,204,203,200_東京大学を飛び級で卒業した人は「天才」か?

前述の『マンガの現在地!』と一緒に購入した本に、最近話題の落合陽一さんによる『これからの世界をつくる仲間たちへ』という本がありました。落合さんは東京大学を飛び級で短期卒業したことで知られており、現在はメディアクリエイターや大学教授として活躍している20代の男性です。「メディアクリエイター」と言うととっつきにくく、何をやっているかもよく分からないと思われがちですが、この本は落合さん自身が現代について思う事、未来について考えている事がとてもわかりやすくまとめられており、同時に就活や転職についてもとても役に立つ本だと感じられたのでここで紹介することにしました。

落合さんは東京大学を飛び級で卒業し博士号を取得した人ですが、この本で自らを「天才では無く変態」と称しています。天才と呼ばれる人達はある1つの事に強い興味を持ち、そのジャンルに於いて強い生産性を発揮するが、範囲が狭く枠組みが限られています。一方変態である自分はどちらかと言えば、興味の対象に関わる事柄全てに対してフェティシズム的な興味を持ち、結果的に専門性が広く取れる、というのが落合さんの意見です。「天才プログラマー」と「ゲーム全般に執着する変態」の違い、と言えましょうか。これは同じようですが、知識を仕入れる広さで言えば後者の方が圧倒的に広くなり、挑戦できる可能性が多くあるために失敗率も下がります。

library scene illustration in flat design受験勉強に意味が無い時代

この落合さんと私は1つしか年が違いませんが、私たち世代にとって「インターネット」が近しい存在になったのはせいぜい中学生くらいでした(落合さんは自分の趣味で8歳からコンピューターに触っていますが、これは本人も述べている通り特異な例です)。私も受験勉強を小学生の頃からしていたのですが、子供にとって受験勉強とは「思考」と言うより「暗記」です。どれだけ多くのことを暗記できるか、もちろんそこに体系的な知識や流れを掴む力、考え方があれば別ですが、基本的にどの学校でも塾でも言われるのは「ここ、テストに出ます」であって、全体の流れや勉学としての全体像で今学んでいるものが何の意味を持っているかについては語られません。当時はそれでもまだ受験勉強をして良い学校、良い就職・・・という部分に「知識の詰め込み」は役に立っていましたが、現在では何でもすぐにインターネットで調べられる時代が来てしまいました。よっぽどのことが無ければ「ネットで調べてはいけません」というシチュエーションはありません。つまり「知識の詰め込み」は以前ほどの意味を持たなくなってしまったのです。

これが何を表すかというと、結局私たちは「知識」では無いものを強みにしなければいけない、ということです。本文中にも例がありますが「エキサイト翻訳で翻訳された文章を知る事」よりも「エキサイト翻訳が綺麗に訳すことができる文章を考えられること」の方がクリエイティブであり、重要です。これはインターネットで調べられることではなく、ものを0から考えるという力です。

Fotolia_101638817_Subscription_Monthly_M「パズドラ」を作る人ではなく「パズドラ」を考えつく人になれ

落合さんの本には、IPS細胞の例が出て来ます。「IPS細胞は『作って下さい』と言われて出来た物では無く、山中博士が必要性を考え、生まれたものである」という意見が展開されています。研究者だけでなくクリエイターもそうですが、「言われて作る」というのは社会人として当然のスキルです。それは「何をどうすれば良いか」という手順がある程度知らされているからであり、誰かの決定を遂行するだけだからです。しかし本来、アニメゲーム漫画の業界であれ、業界を大きく動かすのは「何をするか」を考えて決定できる人です。「パズドラ」も「艦これ」も、これまでに無いゲームでしたが「これを作ってヒットさせる」という発案者の思いがあったからこそ、その下に続く何百人ものクリエイターがゲームを制作し、世に出たのです。しかし実際はどうしても就職した先で「言われてやる」方に終始しがちです。よく求人広告にある「意見はどんどん取り入れます」という謳い文句は、それだけ自主的な意見がこの業界全体で出にくいという現実を示しています。

New day本当に「クリエイター」として就職しているか?

みなさんがアニメゲーム漫画業界で活躍したいのであれば、本当にクリエイティブな人になっていただきたいと思います。少なくとも「言われてやる」という作業は、1年も続ければ即「考えない人」になってしまいます。注意してみればこの世の中には「教えてもらうからやる」という、保険のきいた道や方法が沢山あります。しかし本当は「方法を考えて教える」という立場の方が責任があり、どんな状況でも対応ができる強い存在なのです。教えてもらう、言われたことをやる、というのはとても楽な状態なので大半の人がそうして就職してゆきますが、どうか「考える」というプロセスを捨てないで下さい。もしあなたが就活中であれば、何故その就活の方法を取っているのか、それは人に教えられたものではないか見直して下さい。転職を考えているという場合は、転職先の会社に対して何をもたらすことができるのか考えてみて下さい。それだけでクリエイターとしての価値、寿命は充分に伸ばすことが出来ます。

PROFILE

平田 悠貴 ビ・ハイア株式会社副社長

平田悠貴

ラクジョブ運営会社で2番目に偉い人で現場で1番偉い人。東京都在住。学習院大学文学部哲学科出身。ラクジョブはこの平田さんがいなかったらもっと前になくなっていたでしょう。アニメをみて、作画が良いと良く感動して泣きます。