2015.12.27

ソーシャルゲーム開発担当者さまへ その条件では良い3DCG会社は見つかりません!

この記事はラクジョブに書いた記事ですが、Facebookでシェア&いいねが800以上、リツイートされた回数も1,000回以上という反響を呼んだ記事なのでコチラにも転載しておきたいと思います。

この記事はソーシャルゲーム業界と、遊技機中心の映像制作会社の人月単価のギャップについて語っている記事です。下記にも転載しておきます。

モデリング制作、モーション制作、エフェクト制作・・・現在ソーシャルゲーム関連会社さんからは、兎にも角にもこういった制作会社が必要なんです!というご相談を頂きます。ご相談頂く企業の皆さんは大手SAPばかりで有名コンテンツも多く作られているのですが、今は1にも2にもクオリティが求められる時代です。何とかもっと高い映像や画面を持った作品を作り出せないか、ゲームのOPでユーザーの心を掴み事前登録を増やせないか、という狙いで「どこか良い会社さんは無いですか?」というご相談が毎週生まれています。しかしこの「良い会社」を探すための前段階、仕事の内容的にご紹介がどうしても立ちゆかないという事が多々あります。その理由について、3DCG会社側から切り込んでゆきましょう。

3DCG会社にとって2015年は激動の年でした。ちょうど2014年の9月頃からパチスロの出玉規制が敷かれ、その結果パチスロの映像制作を主に行っていた3DCG制作会社は軒並み進んでいた案件が無くなったり無期延期になったりしてしまったのです。「出玉規制」について書くと長くなりすぎるので避けますが、簡単に言えば「パチスロ業界全体でプロジェクトの見直しが強制された」事になります。遊技機系の仕事は短くても半年、長ければ2年以上に渡る長い案件になるのが通常です。結果、3DCG制作会社は一斉に、半年〜2年以上、仕事の予定が無くなったり狂ったりしてしまいました。これが2015年の年明けまでに起こったことです。

この規制より少し前の2014年7月、株式会社コロプラから3DCGのスマホゲーとしてその後大ヒットを記録する「白猫プロジェクト」がリリースされました。「白猫」は同年11月に2,000万ダウンロードを突破、App storeランキング1位を獲得し、これが3DCGを利用したソーシャルゲーム制作ブームに火を付けました。それまでも3Dで制作されたソーシャルゲームは多々あったものの、大手コンシューマーゲームから出たものだったり、フル3Dという形では無く部分的な人物モデリングだけだったりと「話題にはなるけどソーシャルゲームSAPからは出ない」ゲームがほとんどでした。しかし「白猫」のブームによりフル3Dの本格ソーシャルゲームの制作が爆発的に増えてゆきます。現に、2015年のTGS(東京ゲームショウ)で出展したソーシャルゲームSAPからは、フル3Dを売りにしたゲームの紹介ばかりが目立ちました(参考:電撃オンライン 東京ゲームショウ2015特集 http://dengekionline.com/sp/tgs2015/ )。

そうして皮肉にも3DCG制作会社にはソーシャルゲーム会社から3D制作の相談が行くようになります・・・が、大きな問題がありました。それは「金額面の不一致」です。2014年後半〜2015年夏頃までのソーシャルゲーム会社から3DCG制作会社への平均人月は「40万〜50万」でした。いや、それどころかまず人月として語られることさえ無く、「1体につき10万円前後」という歩合制の提案が多かったのです。この「1体」を作りOKが出るまでに短くて5営業日、結果的に4体作って毎月40万円・・・というのが平均的なソーシャルゲーム業界3D単価でした。

しかし、この金額は遊技機の案件をこれまで手がけていた3DCG会社から言えば論外の金額です。なぜならパチンコ・パチスロ事業の平均単価はメーカー直で80〜90万。仲介会社を挟んで孫請けになったとしても60〜70万は必ず確保出来たからです。50万くらいの人月になると「安くてやりたくないなぁ」という意見が出る3DCG会社にとって、40万前後の仕事は全く釣り合いませんでした。しかもパチンコ・パチスロは1年単位の仕事の所が、ソーシャルゲームだと長くても3ヶ月〜半年です。リスクが高すぎるのです。

ハイエンド、ローエンド、リアルタイムレンダリング、プリレンダリング、ローポリ、ハイポリ、モーション、モデリングという言葉すらしらないソーシャルゲーム開発会社さんも居ます。映像制作会社からすると仕様や人月を決める際に当然出てくる言葉なのですが、言語、常識を共有してないのでそもそも見積もりが出来ない、と言う場合もあります。無知が悪いと言うよりは、発注先も受注先も、相手が何を知らないのがそもそもわからん!という状況になってしまっているのです。これではいい仕事が出来ようはずもありません。

実は現在でもソーシャルゲームの企業様から「3DCG会社さんを探しています」という事で出していただく条件が人月40〜50万程度の事がよくあります。その上パチンコ・パチスロでは3DCGのモデリングの細かい手直しでも追加料金が発生していますが、ソーシャルゲームの場合は発生しない場合がほとんどです。結果としていくら腕の立つ3DCG会社でもソーシャルゲームの仕事を請けず、かと言って仕事は無いままメーカーと3DCG会社の平行線が続くのです・・・。

この「単価感の相違」はこのように1年経った今でも問題になっていますが、未だに「良い会社に巡り会えません」「3DCG会社を探しているんです」というSAPさんからの声と「ソシャゲの仕事は安すぎて出来ない」「でも遊技機の仕事も無くて困ってる」という3DCG会社さんからの声は尽きません。ああ勿体ない!

3DCG制作会社さんの平均年間売上(ビ・ハイア調べ)は、2013年まで20名前後の会社で2.5億円程度でした。しかし2014年になって約5000万円は全体的に売上が落ちています。単純計算で、20名で人月単価85万の仕事を請けていた会社が、同じ人数で65万の単価の仕事を請けるとしたらそれだけで売上は約5000万円のダウンです。その約5000万の中には優秀なスタッフへの給与や新しいソフトウェアへのアップデート費用、家賃など様々入っています。現にこの2015年の間に買収された3DCG制作会社も複数ありました。どの会社さんも「オリジナル作品が作りたい」「綺麗な3DCG映像を作りたい」という夢を持っていたのにも関わらず、単価の合わない仕事が増えたことで立ちゆかなくなったという事情があります。

ソーシャルゲーム会社の皆さんはこれからまだしばらく3DCGが必要になってくると思いますが、くれぐれも金額面については気をつけて頂ければと思います。3DCGは2DCGと違い、下書き→ペン入れ→塗り→効果 といった、どこからでも部分修正ができるものではありません。一定ポリゴン内でモデリングし、それに合わせてテクスチャを作り、ボーンを作り、モーションを作り、コンポジットし・・・という、1つでも修正が入れば全て修正しなければいけない世界です。そういった理解のあった上でソーシャルゲームメーカーと3DCG会社が協力し合えるのであれば、今後も両者間で良いコンテンツが生み出せることと確信しています。どうぞ頭に入れてみて下さい。

もし、良い外注先を紹介して欲しい、その他、仕事を紹介して欲しいなどの相談があれば下記フォームからどうぞ。

PROFILE

平田 悠貴 ビ・ハイア株式会社副社長

平田悠貴

ラクジョブ運営会社で2番目に偉い人で現場で1番偉い人。東京都在住。学習院大学文学部哲学科出身。ラクジョブはこの平田さんがいなかったらもっと前になくなっていたでしょう。アニメをみて、作画が良いと良く感動して泣きます。