2016.03.03

中国の配信規制。アニメ制作案件はどうなる?

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中国の配信規制。業界には青天の霹靂

先日、中国が外国企業のコンテンツをインターネット上で配信する事を禁止するというニュースが流れました。アニメやゲームといった娯楽コンテンツはもちろん、あらゆる文章や動画、地図でさえ規制されます。これは特にゲーム業界にとっては青天の霹靂で、海外へのコンテンツ配信が当然となっている会社、それを予定している会社にとっても衝撃的な出来事でした。今でもまだ整理がついていない、どうしようか・・・という会社さんもあるようです。

中国、3月10日より外国企業のコンテンツ配信を禁止へ

New Chinese Rules on Foreign Firms’ Online Content(英語)

virtual technologies去年から動いていた中国からのアニメ制作案件とは?

そんな中気になるのは、最近になって増えてきた中国からのアニメ制作案件。中国、日本での協同出資だったり、または中国の資本を受けての日本制作だったり形は様々ですが、これが水泡に帰すとしたらとても勿体ない話になります。去年からプロジェクトが動き、放送実現を3年以内に!としているもの、まだ発表していないだけで有名クリエイターが関わる作品の話など、我々が知らされているだけでも大きな話は複数動いていました。そして「相談ベースなんだけど、中国の資本が動いていて日本でアニメ制作会社を探している」という話だけでも去年は毎月1〜2回のペースでご相談がありました。しかし規制が入るということは、その話も全部おじゃんになるのか・・・?と思い、いくつかの会社さんに問い合わせてみたところ、どこも「あ、あれは問題ないですよ!」というお答え。そ、そうなんですか・・・?

アニメ制作はギリギリセーフの理由

アニメ制作ならOKです、の理由はどこも似ていて「中国の製作だからです」というものでした。中にはコンセプトからシナリオ、制作部分は全部日本に任せますよ、という内容もありましたが、コンセプトが中国企業のチェックを受けてOKなら問題はないようです。案件によっては「自社でTV局を持っているから問題ないんですよ」という豪気なものもありました・・・。他に、中国で流すときはクレジットが日本表記ではなくなるので・・・とお答えいただいた所もあり、なかなか中国の企業側も最初から対策はしていたようです。つまり日本など中国外で作られたコンテンツでも、資本を出しているのが中国企業であり、中国向けに元々作られたコンテンツであればOKということのようです。当然、だからといって自由に作って良いわけではありませんし中国企業側のチェックも入ります。
また、内容的に中国ファンがつきにくいような内容の作品であればそもそもファンがつかないでしょう。何にせよ、最近よく話題になるアニメ制作には、今回の配信規制は大きなニュースではないようです。

Fotolia_94896434_Subscription_Monthly_Mプラットフォームが全ての鍵

一方、配信規制の問題が最も問われているのはプラットフォームの問題です。例えば現在、中国版のAppstoreを通して中国のユーザーはゲームをダウンロード出来るようになっていますが、Appstoreというプラットフォーム自身がもし規制された場合、中国のスマホゲーム文化には当然大きな影響が出ます。同じようにクラウドからオフィスソフトをダウンロード出来るようにしているMicrosoft社も規制対象になるのか?なるとしたら今後どうなるのか?についても本国アメリカでは話題になっています。プラットフォームが進化している現在だからこそ起きた問題と言えるでしょう。またAkamaiなどのサーバー提供会社についてもどうするのか?・・・などなど、簡単に「ネット配信の規制」と言ってもシンプルに済む話ではなくなっています。外国のプラットフォーム事業を規制することで確かに自国コンテンツの上げた売上が一部海外に流れてしまうことは防げますが、場合によっては娯楽だけで無くビジネス面でも不便になってしまうリスクもあります。

smartphoneこれからの海外展開を考える

中国への配信規制があったことで、少なくともゲーム業界には大きな打撃がありました。アニメは今回免れたとは言え、将来はわかりません。ゲーム業界にとって中国はユーザーが多い事から、海賊版が多く作られてしまうとしても中国への進出は積極的に行われていました。今回の様に配信規制が行われても、例えば中国企業から直接受注して配信する、という形であればゲームでも上手く行く可能性は大いにあります。中国政府と中国企業では思惑が違う事もあり、以前より中国の企業とつながりがあるゲーム会社さんなどは「やはり日本のゲームは人気があるので、今までと別の形で中国に持ち込めないか考えている会社もある」というお話はよくあるようです。

今回の配信規制問題は、道として確かに1つ絶たれた部分はありますが、他にもビジネスとしてコンテンツを広げる方法はいくらでもあります。「海外のコンテンツが配信されることが、中国にとってどう損になってしまうのか」「政府として避けたい状況は何なのか」を考えると、規制を守ったまま中国でコンテンツを流行らせるような方法もこれから見いだせてくるのではないでしょうか。

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PROFILE

平田 悠貴 ビ・ハイア株式会社副社長

平田悠貴

ラクジョブ運営会社で2番目に偉い人で現場で1番偉い人。東京都在住。学習院大学文学部哲学科出身。ラクジョブはこの平田さんがいなかったらもっと前になくなっていたでしょう。アニメをみて、作画が良いと良く感動して泣きます。