2016.01.05
加賀クリエイト解散から見る、「これからのゲーム開発はどう在るべきか」について
加賀クリエイト解散から見る、「これからのゲーム開発はどう在るべきか」
年始早々、大きなニュースが入ってきました。加賀クリエイト株式会社の解散です。加賀クリエイトといえば、何年か前に惜しまれながら日本を去った某外資系ゲーム会社のスタッフを受け入れていることでも知られているのですが・・・という事は、彼らを含めた複数のゲーム制作スタッフがまたいくつかの会社に引き抜かれるのだろうか・・・と、人材ビジネスをしている者の生業として気になってしまいます。
加賀クリエイト株式会社は、以前同じく加賀電子の子会社であったサイバーフロントとも提携し、ゲーム制作を行っていました。サイバーフロント解散後はスタッフが一部加賀クリエイトに合流したという話もあり、元々サイバーフロントさんが出していたCivilizationシリーズファンだった弊社代表も期待していたのですが・・・残念です。
さて、加賀クリエイトといえば加賀電子グループの一因として、ゲームアプリやPSVitaでのゲームを開発・販売していることで知られていました。今回の解散に繋がってしまったのは、どういった点に敗因があったのでしょうか。現在ゲームメーカーとして活躍されている企業様だけでなく、どういった案件を請けるための技術を磨くべきかという意味では開発会社さんにも注目して頂きたいと思います。
加賀クリエイトで開発していたのは基本的にPSVitaのゲームとゲームアプリです。まずPSVitaの市場規模について見てみましょう。2015年デジタルコンテンツ白書を見ると、2014年のソフトウェア国内販売本数及び販売額全235,637百万円の中で、PSVitaの占める割合は1.8%。約42億4000万円です。更に2015年に売れたコンシューマーゲームソフトランキング(ファミ通調べ)を見てみると、Vitaがランクインするのはやっと11位め。ほとんどが3DSで占められている状態です。
振るわなくなった国内PSVita市場。ビ・ハイアだけで15個買ったのですがそれでは支えきれなかった・・・
つまり、Vitaは現在勝負するにかなり厳しい市場なのです。その上11位のMinecraftは発売元こそSCEですが、元の開発は海外です。この後ランキングで国内のゲームが登場するのは18位、バンダイナムコゲームスのGOD EATER 2 RAGE BURST(ゴッドイーター2 レイジバースト)。推定年間販売総数は33万2846本です。また、同じくデジタルコンテンツ白書2015によると家庭用ゲームの国内市場規模は減少の一途を辿っており、海外でのゲーム専用機市場の方が増加していることがわかっています。
加賀クリエイトが発売していたVitaのゲームは「咲-Saki-全国編」のようなキャラクター麻雀ものや、「魔女こいにっき Dragon×Caravan」のような恋愛アドベンチャーが殆どでした。
しかしこれらは海外への輸出も難しく、何より海外展開をする際にテキストが多いこと、ニュアンスの翻訳が難しい事などからローカライズに向かないとされています。こうして海外をねらえないまま国内のニッチなハード及びニッチな層に向けたゲーム作りをしてしまったことは、ひとつの敗因と言えるでしょう。3DSでも海外向けを意識したものは少なく、上記のベスト10の中でもSplatoon以外は既存コンテンツの続編か派生作品となってしまっていますが、それが残酷にも国内で安全に作れるコンシューマーゲームジャンルとなってしまっています。
それではスマホアプリはどうでしょう。加賀クリエイトのリリースしたアプリは10月末時点で全てサービスを停止してしまったため現在はインストールができませんが、ネット上で確認はできます。加賀クリエイトがリリースしていたアプリは以下の6つ。
「恋するボイスアルバム」
「つちのこヌキヌキ ~日本全国抜いて集めて大発生~」
「あいつに壁ドン!! ~天国か地獄の分かれ道~」
「エレクトリックヒーローズ」
「トマトドミニオン」
この内「ブラッド オブ ドラゴン」以外は、いわゆるシンプルな短時間制カジュアルゲームです。「ブラッド〜」はカードゲーム系バトルRPGで、カード自身の進化が楽しめるなどのポイントがリリース当時の記事には書いてあります
プレスリリース記事より
http://www.4gamer.net/games/258/G025857/20140528008/
しかしながらこのゲームはリリース後わずか半年でサービスが終了。その後、翌年の春には乙女ゲーム要素のある「恋するボイスアルバム」をリリース(2ヶ月でサービス終了)、5月末から9月まで「つちのこヌキヌキ」「あいつに壁ドン!!」「エレクトリックヒーローズ」「トマトドミニオン」と連続でカジュアルゲームをリリースしてゆきます。どれもアプリ内課金はあったようですが、どれも10月31日でサービスを終了しています。
大きめの開発であったであろう「ブラッド〜」の開発予算を最大1億円と見積もっても、他のカジュアルアプリに関しては5つ足しても1億円になったかどうかわかりません。しかし、運営費含め数億になったと予想されるアプリゲームを、半年以内に回収するのはなかなか簡単な話ではありません。「ブラッド〜」の初動を見てサービスが半年で終了した可能性もありますが、予算を切り詰めた結果余裕のあるアプリ開発ができなくなってしまったという見方ができそうです。
以上、簡単に見てみましたが、コンシューマー部門では「Vitaという小さい市場に対して、更に顧客を選ぶゲームの制作を行ったこと」、アプリ部門では「予算の回収スケジュールが十分でなかったこと」が今回の加賀クリエイト解散を早めた原因のいくつかだと思われます。コンシューマーゲーム制作は今でも根強く行われていますが、やはりどのハードで出すかというのはデリケートな問題です。個人的にはVitaが使いやすいVita贔屓なので、本当はVitaソフトが増えて欲しいところではありますが・・・それでも圧倒的優勢な3DSにはなかなか追いつけません。
また、アプリ制作についてはよく「カジュアルゲームはリスク低く儲かると聞いたのですが・・・」というご相談を頂くのですが、悲しいことにそうとは限りません。確かに「にゃんこ大戦争」のような怪物的大ヒットはありますし、そういったヒットを狙ってのご相談なのですが・・・ああいったゲームは「予算が低く済むから」という理由で作られていると言うよりは「何としてもこの世界観を世に!」という情熱が底に流れていて、これをコピーする事は大変難しいのです。コレを言っては元も子もないかもしれませんが、どんなゲームであれ「とりあえず作ってみるか」「あれの真似をしたら、それなりの数字は出るだろう」というゲームは本当に・・・上手く行かないのです。そして悲しいながらこういった例は本当に良く見かけます。ゲーム開発を発注される開発会社さんもそれは嬉しくないはずです・・・。
長くなりましたが、ゲームに大切なのは「計画性」と、ソーシャルゲームの場合はもはやコピー不可の「情熱」です!というお話でした。今年はゲーム業界が儲かってやばい!!という記事をもっと書きたいと切に願っています。無論、その情熱を持って挑戦してくれた加賀クリエイトさん達も会社がなくなっただけでクリエイターさん達はいきています。彼らが活躍出来る場が増えるよう業界全体を大きくしたい!そんな思いでラクジョブを運営します。
採用のご相談、ラクジョブへのお問い合わせは下記からどうぞ