2015.12.20
マンガ編集者 募集について 〜WEBマンガという新しい市場に対応する編集者とは何か?〜
ラクジョブはとかくゲームとアニメの求人が多く掲載されがちです。マンガ関連の募集もこれまでいくつかしてきましたが、ゲームやアニメといったコンテンツに比べると募集記事が少ないのが現状です。何故か?大きな理由は2つ。「出版社が少ないこと」と「出版社は自社採用が多い」からです。現在、私達が独自で築いたアニメゲームマンガ業界関連ネットワークの内、アニメゲームマンガ業界会社の割合は下記の通りです。
ゲーム/73% アニメ/18% マンガ/9%
マンガの圧倒的少なさ!更にいえばこれらは全てが出版社では無く、編集プロダクションだったり、個人作家のスタジオだったりするため、純粋にマンガを取り扱っている出版社は更に減ります。そして、皆さんも名を知るような大手出版社というのはこの9%の中でも更に少なく、それ以外の出版社を併せても従業員の平均人数は38人です。(経済産業省の平成22年特定サービス産業実態調査より)マンガ業界・・・というか出版社の場合、主な職種は大抵編集者と作家に別れます。作った本を書店に売る営業という仕事もありますが、40人規模の会社であればそんなに多くはありませんし、編集者や社長が兼任することもあります。これまでラクジョブはマンガ関連の求人問い合わせを頂くことも数多くありました。その求人職種の内訳は、編集者9割、マンガ家1割です。また、大手出版社が求人広告で編集者を集めることはあまり多くありません。新卒採用でも、講談社で去年16〜20人、集英社で13人、小学館も「若干名」と表記されています。(それぞれマイナビ、企業HP参照)
その一方、誰もが気になる「電子書籍」はどうでしょう?
上記は菊池健氏のブログ「漫画の真ん中」より『電子書籍ビジネス調査報告書2015』および『出版月報』より、試算して作表された図
http://tkw-tk.hatenablog.jp/aboutです。
こちらは紙媒体のマンガとWEB媒体のマンガの市場をそれぞれ表した図ですが、WEBコミックの市場はどんどん大きくなっています。最もこれは「電子書籍で出版された紙媒体雑誌に掲載しているマンガの売上」も入っているので、全てが「WEBコミックサイト」の市場ではありません。しかし2012年から大手出版社のWEBコミックアプリ、サイトが次々とオープンしたことにも見えるように、WEBコミックに関する動きは活発になってゆく一方です。WEBコミックサイトは紙媒体の無いIT企業によって運営されているものが多く、まだ歴史も浅いためにビジネスとして大きな収益につながっているものは少ないのが現状です。そんな中求められるのが何より「編集者」。ラクジョブにこれまで寄せられた編集者募集のご相談も、8割がネット上での編集者でした。しかしWEBコミックの編集者というのは紙媒体の編集者と少し違います。これまで伺った「WEBコミックのための編集者」募集要項は下記のようなものが含まれていました。
・マンガ家や絵師をよく知っている人
・WEBマーケティングに強い人
・紙媒体での編集経験があれば尚良し
これをまとめると「大手出版社でWEBコミックサイトの立ち上げを経験し、それなりに成功まで持って行った経験のある編集者」が最も理想的です。しかし当然そんな人はほとんどいませんし、転職をする可能性も余り高くはありません。その代わりこれらの求人に共通するのは「年齢が40を超えていても良い」というものです。ベンチャーの気質を持ったIT企業からの募集が多いので、ベンチャー気質で行動力を持ち働けるのであれば年上であれ全く問題にはなりません。他にも、「編集者」という名前ではあるものの、実際は連載媒体の広告営業やコラボレーション企画を作るというもの、既に別の所で発表されている成人向け漫画作品の修正を行うというもの、ガラケーを使っている人向けにマンガのコマを切って納品するという人など、仕事の内容も会社によって様々でした。
出版社という「書籍をゼロからデザインしてマーケティングし、店頭に並べて買ってもらう」ビジネスとは違い、「WEB媒体にコンテンツを掲載して訪問者を増やし、コンテンツを通して広告収入やキャラクタービジネスを広げる」といったビジネスモデルを持つWEBコミックは、必要な編集者の内容もどちらかというとWEBマーケティング的な人材を求めているのです。しかし、作品を買ってもらうため、雑誌を買ってもらうためにコンテンツの中身にかなり凝る紙媒体ベースの編集者と、出来上がったコンテンツを資産としてどうビジネスに生かすかを考えるWEBコミックの編集者では、やはり出来上がったマンガのクオリティにも差が出てしまいます。
今はWEBコミックがとにかく増え、WEBコミック媒体での作家募集も随時行われていますが、今後はコンテンツの数よりコンテンツの質が問われることになります。その際、マンガのビジネス展開だけでなく「より良いマンガ」を作るために必ずクリエイティブをわかった編集者が必要となります。今編集者を目指している、またはWEBへ移ろうと考えている編集者の方は、WEBビジネスの知識を身につけた上でクオリティの高いマンガを作る作家と協力して作れる人材が必要とされることを予測しておいて下さい。どんなものも「量より質」に行き着きます。皆さんの知識や技術、情熱がこのIT化の波と上手く合い、更に面白いマンガコンテンツを産み出すことを期待しています!